手のひらを求めて

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「優しいですか、僕はみなさんの様になりたいです。見てくださいよ、この筋肉。この前、ミシェルさんと腕相撲をしたんですが、あっさり負けました」 タイトは自分の二の腕をさすり、溜め息をつく。その腕はとても細く、他の男達とは天と地の差。背も低く、戦いには不向きな体つきだった。 「ミシェルはオズの娘だからな。俺もしたことあるが、見た目に騙されて危うく負けるところだった。そん時は、詐欺だと思ったよ。どんな時でも油断大敵だな」 クレイはゼグラの腹部を撫で、不甲斐ない過去に苦笑いする。心なしか、ゼグラも笑っているように見えた。 だが、炎に照らされるタイトの表情は、真剣そのもの。 「やはり、僕とみなさんでは才能が違いますね。自信無くします」 タイトの言葉に、クレイは顔をしかめ首を横に振る。尻尾だけになった魚を口に放り込み、串を炎へと投げ入れた。 「戦いはなにも、力だけで決まるもんじゃない。ミラルダを見みれば分かる。ミシェルよりも腕力が無く、体も特別大きいわけじゃない。だが、毎日毎日剣を降り続け、“やつら”の研究も怠らなかった。今じゃ遊撃隊の隊長を安心して任せられる」 クレイは、諭すように語尾を強めた。迫力に押されたタイトは、少しの間言葉を失う。 「……僕も、ミラルダさんの様になれますかね」 「ミラルダの手のひらを見てみろ。そうすればタイトにも少しは分かるさ」 「分かりました。僕はまだまだ修行が足らないみたいですね。その辺で、剣を振ってきます!」 タイトは剣を手に、勢い良く走りだした。 クレイは、制止させようと右手を出したが、既にタイトの姿はない。遠のく背中に、クレイは浮かない表情を浮かべた。 (タイト、いつか気付く日を願っている。やみくもに、剣を振り回しても駄目だ。お前は俺達にはなれない。純粋すぎるお前にはな……) クレイは腕を組み、夜空を見上げた。その瞳は、どこか悲しげに映っていた――。
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