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クレイは、ゼグラの背中で眠りについていた。ゼグラの体温と剛毛は睡眠には打ってつけ。さらに、不測の事態にも対応しやすい。
突如、熟睡していたはずのゼグラが、頭を上げる。蒼く光る眼は遠くの暗闇を睨み、敵意むき出しに唸りを上げた。
ゼグラの異変に、クレイも目を覚ます。
そして気付く。遠くで蠢く、悪魔の存在に。
「悪魔だ! この気配は誰かと戦闘してるぞ!」
冷たい夜に響くクレイの叫び。
これに、賑やかだった男達から笑顔が消える。先程までの、和やかな雰囲気は微塵もない。表情は憎しみに染まり、言葉を発する者は誰一人いない。
黒狼の牙、誰がそう呼んだのかは定かでない。
確かなのは、ここにいる全員が大切な人を失っていること。悪魔に対する憎しみが、人一倍激しいこと。
二本の剣を両手で握る復讐者クレイは、小さく息を吐く。ゼグラにまたがり、憎悪に表情を歪めながら──。
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