涙の味

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風を切るように漆黒を駆けるゼグラは、後から追走する馬を引き離していく。 クレイは気付いていた、いつもそばにいるタイトがいないことに。 さらに、タイトが走り去った方角と、向かう場所が合致していた。おのずと答えが出る。 「あの馬鹿、離れすぎだ。俺に印があっても、察知できる範囲は広くないと言ってあっただろうが」 揺れるゼグラの背中で、クレイは舌打ちする。剣を強く握り締め、前だけを見つめた。 ──少し走ると、視界に松明の炎が映った。 すると、微かにタイトの声が耳に入ってくる。タイトが、まだ生きていたことに小さく胸をなで下ろすが、すぐに表情を引き締めなおす。 一カ所に群がる、幾数の悪魔。タイトを襲う悪魔の正体は、すぐに分かった。人に取り憑き、悪魔に変える悪魔、死霊。 「邪魔だぁ!」 クレイとゼグラは、僅かな迷いもなく死霊の群れに飛び込む。 とっさに身構える死霊だが、そんなものは意味をなさない。 ゼグラの爪は腐った胴体を切り裂き、牙が頭を噛み砕き肉片を撒き散らした。 この光景が、黒狼の牙と呼ばれる一つのゆえん。 クレイは左右の剣で、飛びかかる死霊を迎撃していく。クレイとゼグラは、自分の役割を全うする。まささく、一心同体の連携。
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