176人が本棚に入れています
本棚に追加
風を切るように漆黒を駆けるゼグラは、後から追走する馬を引き離していく。
クレイは気付いていた、いつもそばにいるタイトがいないことに。
さらに、タイトが走り去った方角と、向かう場所が合致していた。おのずと答えが出る。
「あの馬鹿、離れすぎだ。俺に印があっても、察知できる範囲は広くないと言ってあっただろうが」
揺れるゼグラの背中で、クレイは舌打ちする。剣を強く握り締め、前だけを見つめた。
──少し走ると、視界に松明の炎が映った。
すると、微かにタイトの声が耳に入ってくる。タイトが、まだ生きていたことに小さく胸をなで下ろすが、すぐに表情を引き締めなおす。
一カ所に群がる、幾数の悪魔。タイトを襲う悪魔の正体は、すぐに分かった。人に取り憑き、悪魔に変える悪魔、死霊。
「邪魔だぁ!」
クレイとゼグラは、僅かな迷いもなく死霊の群れに飛び込む。
とっさに身構える死霊だが、そんなものは意味をなさない。
ゼグラの爪は腐った胴体を切り裂き、牙が頭を噛み砕き肉片を撒き散らした。
この光景が、黒狼の牙と呼ばれる一つのゆえん。
クレイは左右の剣で、飛びかかる死霊を迎撃していく。クレイとゼグラは、自分の役割を全うする。まささく、一心同体の連携。
最初のコメントを投稿しよう!