幻想の笑顔

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「あぁ、めんどくせぇ」 色とりどりの野菜が実った畑の中心、仰向けに寝そべる黒髪の少年は、あくび混じりに呟く。 あどけない顔には疲労が色濃く見え、半開きの目は自由に飛び回る小鳥達を追う。 優しい日差しが体を包み込み、心地良いそよ風が頬を撫でる。 睡魔に襲われ、もうろうとする意識。夢の世界へと誘われ、まぶたがゆっくりと閉じていく。 もうすぐ訪れる至福のひととき――。 だがしかし、少年が描いた小さな幸せは、はかなくも崩れ去る。 「フゴッ!」 突如襲った腹部への衝撃。それは、あれほど強かった眠気を完全に消し飛ばした。 呆然とする少年を後目に、腹部の上であざ笑うかのように揺れる小さなスイカ。 突然と、夢から現実へ引き戻された少年は全く動かない。 「クレイ、しっかり働きなさいよ!」 少女の声でふと我に帰った少年クレイは、慌てて視線を背後へと向けた。 そこには、いかにも活発で元気のありそうな少女が、腰に手を当て見下ろしている。 強い横風で長い栗色の髪をなびかせる一人の少女。他人から見れば、長髪の似合う可愛い少女に映るだろう。 だが、小さな幸せを壊された少年の目には、凶悪な悪魔にしか映らなかった。 「リリ、少しは考えろ! スイカはねぇだろスイカは! せめてナスとかだろ!」
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