涙の味

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宙を舞う肉片は、次々とゼグラの胃袋へと納まっていく。ゼグラにとって、死霊など餌にすぎない。 牙は真っ赤に染まり、口からこぼれた内蔵は地面へと落ちる。 クレイは、死霊を切り裂きながらタイトを探す。戦いながら探すことは困難だが、熟練された目は一瞬の隙を逃さない。 (あれか) ゼグラが二度跳躍すれば辿り着く距離に、剣を振り回すタイトの姿がある。必死に戦うものの、背中からおびただしい血が溢れていた。早く手当しなければ、命に関わる傷。 クレイは足でゼグラの脇腹を叩き、合図を送る。この間にも、タイトは死霊に肩を捕まれ押し倒されてしまう。 「待ってろ!」 クレイは、一直線にタイトのもとへ向かう。最短距離を最速で、多少の攻撃は受ける覚悟。 そして次の瞬間、右腕に激痛が走る。 顔を動かさず目だけをその方向に向けると、牙のように変形した死霊の歯が肌を貫き、筋肉の奥にまで食い込んでいた。 常人なら泣き叫び、のた打ちまわる痛み。 だが、クレイは全く意に返さない。冷静に左手の剣で死霊の首を跳ね飛ばした。 うずくまるタイトに接近したクレイは血に染まった双剣を振るい、群がる死霊を蹴散らしていく。ゼグラは、弾け飛ぶ頭を丸呑みにした。 「そんな……」 クレイは愕然とした。タイトの変わり果てたその姿に──。 左肩から先がない。脳裏をよぎるリリの姿。あの時と、全く同じ光景。 クレイはうち振るえる。言い表せないほどの憎悪がこみ上げ、歯をこすりあわせた。
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