涙の味

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ミラルダは悲しさを押し殺すように笑みを浮かべた。 「クレイ達から話しは聞いている。私に剣を教えてほしかったことを。馬鹿者が……私に声をかけることすら出来ない軟弱者が、黒狼の牙に入るな」 ミラルダは肩を小刻みに震わせ、タイトをそっと抱き締める。 「……温和なお前は、私達のようになれない。復讐に全てを捧げた私達にはな──」 冷たい夜風が容赦無く吹き付ける中、クレイは立ちすくむ。 自分で選んだはずの道は、想像以上に険しい。悪魔と遭遇する毎に、誰かが消えていく。何回経験しても、慣れることはない。 だが、黒狼の牙が減り続けることはない。悪魔に、怨みを持つ者がいなくならない限り、むしろ強大になっていく──。 「クレイさん、埋葬の準備が出来ました」 ボウガンを持つ細身の男が、クレイの肩を軽く叩く。その男は鎧をしっかりと着込んだ他の者達と違い、鎖帷子だけを纏っていた。 「フランツ……。そうだな、タイトもこんなとこにいたら寒いだろう」 クレイは小さく頷き、タイトを抱え上げた。 (そうだ、立ち止まって入られない。俺達にはやるべき事がある) クレイは歩く。力強く踏み出された一歩は、立ち止まる事を許さない。明日の、平和な光を掴むまでは──。
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