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夕暮れの草原、荷を引く馬が行列をなす。手綱で操る者達は口数が少なく、前だけを見ていた。
列の先頭にいる人間は、異様な生物にまたがっている。
巨大な体を漆黒の剛毛で覆う狼、ゼグラ。
何故、相反する種族が共に行動するかは謎。ただ一つ言えるのは、クレイを信頼し、心が通じ合っていること。
ゼグラの背中で仰向けに横たわるクレイは、遥か彼方で沈む太陽をぼんやりと眺めていた。
馬車に乗るリッジは身振り手振りを交え、苦笑いのミシェルを大声で口説く。
馬にまたがるオズは新人に自分の武勇伝を聞かせ、フランツはボウガンを手に周辺を見渡す。
ミラルダは言い寄る男達を無視し、無言で装備の手入れを行う。
それぞれが自由に過ごす安らぎの時──。
そんな時間が淡々と過ぎてゆく中、何かを察知したゼグラが前足をぴたりと止める。
「……これは」
起き上がったクレイが見たもの、それは想像を絶する光景だった──。
そこにあったのは、地面に空いた穴。
それも、村一つが納まってしまうのではないかと思うほど巨大。
周辺にはいくものスコップやクワが置いてあり、人の手で掘られた事を伺わせる。オズの武勇伝を聞かされていた新人は、思わず目をそらす。
それも当然だった。まだ血に慣れていないものには、気が狂いそうになる光景。
巨大な穴に放り込まれた、数えきれないほどの遺体。
まるで、ゴミを投げ捨てるかのように山積みされている。
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