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腐り果て、人間か判別できない遺体もあった。周辺はハエが飛び回り、蛆虫が口の中を住処とする。
あまりに酷い死臭は、おうとを誘発させるほど。
現に、遺体から背を向けた新人は、胃から食べ物を戻していた。オズは心配そうな表情を浮かべ、震える背中を優しくさする。
クレイ達は、この世界の現実を再認識する。数え切れない死体を見てきた目でも、異様の光景。
クレイは微かな違和感を感じたが、特に何も起こらない。眉をひそめ、気のせいかと首を傾げる。
あの日を境に変わってしまった世界。
魂無き抜け殻の山を見つめる黒狼の牙は、各々があの日を思い返す。
「お前達、その死体に近寄っては駄目じゃ!」
突如響く、老人の声。
これと同時に、クレイが感じていた違和感がはっきりとする。この感覚は、まさしくアレと同じ。
「みんな離れろ!」
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