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生が無い筈の遺体は僅かに揺れ、腐った頭から何かが突き抜けた。この現象は、半数の遺体に連鎖的に起きる。
「マジかよ」
リッジは引きつった笑みを浮かべ、首を横に振る。
腐りきった皮膚を突き破ったのは、黒い体毛に覆われた蜘蛛の足。何本もある足は、首から頭を引きちぎった。
見渡す限りに揺れる、無数の頭。遺体に巣くっていた蜘蛛の悪魔は、小刻みに足を動かし大群で押し寄せる。
新人は遺体の頭が迫ってくることに恐怖し、倒れ込んでしまう。
慌てて走っていた老人は、足は止める。全てを諦めた顔で溜め息をつき、呆然と立ち尽くす。
しかし、新人以外の者達は、少しもおどついていない。冷静に武器を持ち、ゆっくりと構えた。
表情を憎しみに染め、悪魔を睨む目は怒りに満ちる。老人はそのあまりの豹変ぶりに驚き、口を開けたまま声が出ない。
その中でもクレイの憎悪は一際激しかった。
「俺は、蜘蛛が大嫌いなんだよ。また、ゼグラの腹ん中に送り込んでやる」
ゼグラの背中から飛び降りたクレイは、悪魔の群れへ勢い良く飛び込んだ。
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