死体は踊り、狼は牙を研ぐ

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「それより、この辺りに村があるはずなんですが、ご存知ありませんか?」 「……あるにはあるが、何もありゃせんよ」 「いいのです。少し準備をしたいだけですから。ある目的のためにね……」 フランツはそう言葉を発すると、禍々しく笑う。 老人が最初に感じた紳士的雰囲気は、もうそこにない。今、目の前にいる男から感じる印象、それは“狂気”そのものだった──。 悪魔に戦いを挑む集団、“黒狼の牙”。その人間離れした力は、既に蜘蛛を全滅寸前まで追い詰めていた。 最後に残った蜘蛛はすばしっこく逃げ回り、逃げ回っている。次々と振り下ろされる剣は、左右に跳躍する蜘蛛を捉えきれない。 力の差を思い知った蜘蛛は、穴に逃げようと必死。気配を消すことに長けているこの蜘蛛が、数多ある遺体に隠れれば捜すことは困難を極める。 しかし、黒狼の牙がそれを許すはずがない。 器用に剣を避けていた蜘蛛だが、僅か一瞬で決着する。 蜘蛛は何が起きたのかさえ分からず、血肉を撒き散らす。 紫色の血に染まる巨大なグリーヴ。最後まで足掻いていた蜘蛛は、二メートルを超えるオズにより踏み潰されていた。 一瞬の凄まじい圧力で遺体の目玉は弾け飛び、グリーヴの裏側には血肉がベットリとこびり付いている。
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