176人が本棚に入れています
本棚に追加
不気味な紫の血だまりが辺り一面を覆い、腐った血肉のこびり付いた骨が異臭を漂わせる。
悪魔の存在が完全に消えたことを確かめたクレイは一つ息を吐き、双剣に付いた血を振り払い背中の鞘へと戻した。
「みなさん、村が見つかりましたよ」
フランツはクレイ達に向かい、笑顔で声を張り上げた。見知らぬ老人を目視したクレイは、全てを把握する。小さく頷き、ゼグラへと飛び乗った。
老人はフランツの馬に同乗し、先頭を歩き出す。背後からの突き刺さる視線に、恐怖を抱きながら──。
悪魔と戦闘を行ったばかりの彼等は、失ったあの日を思い返していた。全員が、悪魔に大事な人を奪われている。それ故、妙に殺気立ち、苛立っていた。
「普段の彼等は賑やかなのですがね。悪魔の事となると、人が変わるのですよ」
老人の気持ちを察知したフランツは、言葉を発する。
「……悪魔が好きな人間など、おらんからの。ワシも、家族を全員殺された。さっきの大穴のどこかにいたはずじゃ」
フランツは老人の言葉に無言になる。そこから村に到着するまでの間、誰も言葉を発することはなかった──。
最初のコメントを投稿しよう!