176人が本棚に入れています
本棚に追加
一部始終を見ていたオズは、馬車から顔を出す。
「そうとも、俺達黒狼の牙は噂ほど酷くない。……まぁ、あながち間違いでも無いがな」
「ちがいねぇ!」
オズの発言は、張り詰めていた空気を和やかに変えた。いつもの、和気あいあいとした雰囲気に戻っていく。
老人は、噂とはどこか違う黒狼の牙に、僅かに警戒を解く。
「……お前さん達、うちに寄っていかないか? ワシはこう見えても、少し名の知れた鍛冶屋なのじゃ。見たところ、血錆や刃こぼれが酷いようだしの」
「それは助かります。是非、お願いしますね。これから、手強い悪魔を狩りに行くものですから」
「……と言っても、大勢で来られても困ってしまう。武具と少しの人数で来てほしい。他の者達は村でも見て回っていてほしいの。小さいが、ここから西に酒場もあるでの」
酒場との言葉に、多くの男達が反応を示す。拳を握り締め、ガッツポーズを取る者までいた。
「よっしゃ! 野郎ども、買い占めて騒ぐぞ!」
リッジの興奮した掛け声が響くと同時に、男達は一斉にその場を離れていった。
最初のコメントを投稿しよう!