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この殺伐とした場には、まるで似合わない陽気な笑い声が響く。
女に施しを与え終えたミラルダは、浮かれるリッジ達を不愉快そうな表情で眺めた。
「みんな、どこへ行くのだ?」
「酒場ですよ」
「なんだと? 全くたるんでいる! 次に我々が刃を交える相手が分かっているのか!」
「まぁまぁ落ち着いて下さい。あっ、そうそうミラルダさん。このご老人が、武具を鍛え直してくれるそうです」
フランツはいつものように笑みを絶やさず、鍛冶屋の老人を二頭の馬に繋がれた馬車へと案内した。
馬車の中に置かれていたは多種多様の武具。剣、斧、槍、ボウガン、そして甲冑。そのどれもがよく使い込まれ、今までの激戦を伺わせた。
老人はそれらを手に取ると、鋭い眼差しを向けた。取り付かれたようにじっと見つめ続け、一言も声を発さない。
その様子を見たフランツは笑みのまま小さく頷き、老人を乗せた馬車の手綱を引く。
鍛冶屋との言葉にミラルダの怒りはどこかに消え、自分の腰にある鞘へ目を落す。
武器を抜きよく調べると、いくつもの刃こぼれが見受けられた。
ミラルダはすぐに武器を納め、フランツの後を追うように馬の手綱を引くのだった。
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