死体は踊り、狼は牙を研ぐ

11/17
前へ
/126ページ
次へ
途中、窓の隙間から幾度と無く冷ややかな視線が浴びせられる。クレイが顔を向けると、すぐに身を隠した。 このご時世、良心的な親切心を持つ者から破滅の道を辿る。危険な匂いを感じたら、関わらないことが懸命。それが、世の常識となっていた。 クレイは僅かな溜め息をつき、いつものようにゼグラの背中で仰向けとなる。リラックスしたように足を組み、ぼんやりと空を見上げた。 (リリが生きていたら、どうなるのだろう? こんなふうに、変わってしまったのだろうか? ……いや、リリは変わらないな。きっと……) 思想を脳裏に映し出すクレイは、いつしか浅い眠りにつく。 ──それから程なくして、先頭を歩く馬の足が止まる。老人は馬車を降り、一軒の建物を見上げた。 「ここじゃ」
/126ページ

最初のコメントを投稿しよう!

176人が本棚に入れています
本棚に追加