死体は踊り、狼は牙を研ぐ

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案内された建物はクレイ達の想像とは異なり、とても大きなものだった。 石造りの二階建てで、とてもしっかりしている。くたびれた村の様子から、小さな工房を思い浮かべていたクレイ達の想像を覆す。 「立派ですな」 オズは右手で顎をさすり、家の端々を見渡す。隣りにいるミシェルも、視線を左右に動かし驚いている。 「昔はよく、剣を打っておったからの。おかけで、暮らしは楽だった。今では弟子達も僅かになってしまった。もうこの辺りの人間は、当の昔に戦う気力を失っとるからの。だれも武器を欲しがらんのじゃ」 老人は悲しそうに言葉を発し、扉を開けた。 クレイ達は武具の入った木箱を抱え、工房へと足を踏み入れる。 その直後、肌を照りつける強い熱気が押し寄せ、体を包み込んだ。 視界に広がったのは、とても広い工房。 熱せられ、赤く染まった剣に数人の若者が金槌を振るっている。繰り返し繰り返し響く、金属を叩く音。 「どれ、武具を見せてみなされ」 この言葉に、ミラルダがいち早く反応する。腰の鞘から武器を引き抜き、老人に手渡した。
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