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「ご老人、これを頼む」
「……これは、ここから遥か東に存在する国の武器、“刀”じゃの。ここいらじゃ、高級品じゃが、あんたは貴族か?」
老人は物珍しそうな目をし、あらゆる方向から観察した。ミラルダは一切言葉を返さず、その様子をただ眺めている。
「そうそう、ワシの名前はドルトルじゃ。いつまでもご老人じゃ、かなわんからの」
「失礼、私はミラルダ・ウェントス。黒狼の牙で、遊撃隊隊長を勤めている」
「ほぅ、女の身であの黒狼の牙の隊長さんとは……。想像以上の鍛錬を積んできたようじゃの。うむ、刀は任せなされ」
ドルトルは胸を張り、テーブルに刀を置く。木材で作られたテーブルは、黒焦げた後や刃物の切り傷が至る所に刻まれている。
これだけで、長年に渡り使い込まれてきたが分かる。
「そうじゃ、そちらさんの武器も見せてくれんかの」
ドルトルは子供のように無邪気に輝いた目で、オズが背負う巨大な斧に見つめていた。
オズは深く頷き、斧を慎重にテーブルへと置く。
その斧と呼ぶにはあまりに巨大な鉄の塊は、ドルトルの腕力ではとても持ち上がりそうにない。
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