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「アンブレル、そのケースを開けてくれ」
少年がそう言った瞬間、何か触手のような物がサックスケースの下からウネウネと現れた。
それはゆっくりと高い位置にあるロックに伸び、器用にケースを開けてしまう。
「あ、あのー……」
「くそっ、何だこの馬鹿デカいサックスは。これだけのサイズ、重量だからどんな良い物かと期待したのに」
いや、バルバロッティさんのサックスってだけで相当なプレミアが付くと思うんだけど……もしかしてこの子、この列車がどんな列車なのかとか何も知らずに盗みに入ったのかな。
「そんな物盗んでも仕方ない。アンブレル、さっさと逃げるぞ」
触手の塊はスルスルと縮こまり、すぐにサックスケースの下から出てくる。
それは昔図鑑で見た宇宙ウミウシに似ていて、何だか愛嬌のある顔をした生物だった。
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