ラッキーガール

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  お母さんが 思い付くお仕置きは全部痛かった。 だから 毎日毎日、 お母さんに怯えて 暮らしてた。 お母さんに 名前を呼ばれるだけで 身体がびくつく。 そんな風に怯える あたしを見て、 お母さんは また腹を立てる。 『お母さんは 鬼でも蛇でもない』 これは お母さんの口癖だけど、 あたしは腹の中で 何時も何時も 『鬼や蛇の方が よっぽどマシだな』 と思ってた。 口が裂けても 言える訳がないけど。 きっと お母さんも最初は 躾のつもりで いたんだと思う。 でも、 気付くと 何かの捌け口に 変わってたんだ。 酷く殴り 蹴り回して ぐったりした あたしにお母さんは 『あんたは間が悪い』 と冷たく言って 部屋を出て行く。 間が悪くて 運が悪くて だけど、 生きることに関しては 強運の持ち主だった。  
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