溜息

10/10
前へ
/262ページ
次へ
「では、失礼します」  千草がそう一言告げれば、扉を押さえていた手はあっさりと離れ、それを軽く引いてあけることができた。  扉が閉まる瞬間に隙間から彼の苦笑いがうかがえたので、千草の皮肉は伝わったのであろう。  閉まりきった扉を挟み二人同時にため息をついた。  ひとつは甘く吐き出すように。  ひとつは胸に巣くった黒いものを吐き出すように。
/262ページ

最初のコメントを投稿しよう!

17841人が本棚に入れています
本棚に追加