溜息

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 以前の彼の秘書達は彼の人選により、美人でスタイルのいい人間達が選ばれていたのだが、選んだ本人ではなく、選ばれた側の彼女たちが、専務に夢中になってしまい、仕事がうまく回らなくなってしまったのだ。 修羅場なんぞ腐る程あった。  それを見かねた重役たちがもっとマシな秘書をあてがおうと模索していた、ちょうどその時期に、中途採用された塚本千草に白羽の矢が立ったのである。  面接時から真面目で先のバカ女たちとは違うと感じたのだろう。  見た目の、女の厭らしさを感じさせない清潔感。    近寄り難そうなイメージに加え、以前の仕事での功績も評価されたのだ。 秘書の挿げ替えに難色を示していた本人も、男が来るよりはと渋々納得した。 元より秘書については別段必要としていないというスタンスを貫いてきた男だ。 仕事の出来不出来には期待はしていなかった。 が、2年も続いた秘書は初めてのこと。 男なりに認めているのではないかというのが、周りの見解だ。
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