どうあっても輝く星であれ

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車椅子を押しながら、帰路を歩いていく 「しかし、よかったな!これでおまえもようやく家に帰れる!」 「はい」 空には星が瞬き、既に満天の星空という名称がピッタリの光景になっていた 「…綺麗ですね」 「ん!?何がだ!?」 「いえ、星が…」 「星!?」 将人も、やや上方に意識を集中する 「おぉ!懐かしいな!最近、星を見上げることなんてなかったからな!」 「そうですね、…どうして、見なくなったんでしょうか」 こんなに綺麗な星空 毎日でないにしても、いつでも見れるはずだ それを忘れるはずはないのだが しかし、将人は答を知っていた いや、予想、と言った方が正しいか 「それはだな!俺が星になると言ったからだ!」 「…え」 視線を進行方向に戻した将人が、やかましく答えた 「おまえはずっと、俺を星だと思ってたんだろうな!少し恥ずかしいが、兄としては鼻高々だ!」 ずいぶんらしくないことを言う ただ、将人が言ってることで、間違いないのだ あの事件の直前も、その前だって、星を見れば、必ず将人を思い出した 大切な思い出 嬉しい、と感じた思い出が 「…兄さん…」 「ん!?何だ!?」 やかましく聞き返す その時、言おうと思った言葉が出てこないことに気付いた どうしてだろう 今は、言ってはいけない気がした 「…なんでもないです」 下手くそなはぐらかし しかし、将人は、そうか、と流してくれた 家は、もうすぐだ
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