ビギナー時代

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ある日の晩、いつものようにパチンコ屋で薫を待っていた。 その日の僕は一番左の355番台を打っていた。 5千円の投資で当たりを引き、出玉を使い薫を待っていた。 右隣りの353番台は、デジタルは揃うがなかなかVを引けないおじさんが打っていた。 「これ、どうなったら当たりなの?」 おじさんは僕に話しかけてきた。 「数字が揃ったら上のチューリップに玉を入れて、Vに玉が入れば当たりですよ」 「Vってどこ?」 「太郎の頭です」 僕は、Vゾーンに導いてくれる男の子の人形に“太郎”と名前をつけていた。 「太郎?」 「あっ 人形のことです」 「???」 「この台、コツがいるから、結構難しいですよ」 そんな会話をしてからおじさんはしばらく打っていたが、太郎に嫌われたのかVを引くことはなくやめてしまった。
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