nursery storys

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 覚悟は、出来ている。  霧野 冬美は、思い切って扉を開いた。 すると、すぐに声をかけられた。 「ようこそ、『nursery storys』へ。」 冬美は、男の低めの、甘い声質にドキッとした。 声をかけた男は、扉から入ってすぐ見える机にいた。 30代のようだが、ピアスをつけ、金茶の長めの髪に、シャープな曲線の輪郭がよく似合っている。黄金色の切れ目が印象的な男だった。  切れ目なのにとろんとした目付きは、冬美に、急にどぎまぎさせる。 (ここで間違いない、のよね。) 男の耳のピアスが部屋の中の光を集め、煌めいている。 アクセサリーや、髪などで、けばけばしい、と見えないのは、涼しげで、けれど影を帯びたミステリアスで端整な顔つきで賄われている。 とは言っても、派手な風貌には違いなく、水商売の匂いを伺わせる。 「あの、」 冬美は、自分が来ようとした店か尋ねようとした。 男は、冬美の言葉を遮り、笑みを浮かべ、席を立った。 「新規の方でいらっしゃいますよね?オーナーの貴城です。」  貴城は、冬美に近寄りお辞儀をした。 (おっきい・・・。) 夢見心地で、冬美は貴城を見上げる。 冬美自体、割りと身長が高い方だから高めのヒールを履いて見上げる、というのは滅多にない。 (こんな人が彼氏だったら・・・。) ボーッとしてる冬美に貴城がまた声をかける。 「あの?」 「あ、あの霧、」 「名前は結構ですよ、お客様。」 「そう、ですか。」 冬美は、緊張する。こんなことは、初めての経験だ。 全身が硬直する感じがした。 さっき迄は、顔が真っ赤になるぐらい火照っていたのに、今は体の中がゾッとし強ばっている。 「当店では、オーダーメイドのシステムなんですよ、蓮見さんお願いします。」  貴城が奥の方へ声をかけると、焦げ茶の髪を結い上げた、20後半ぐらいの女性が出てきた。 色白の、綺麗に化粧をした溌剌としたハーフ系美人。 にこやかに女性が言う。 「蓮見です。どうぞこちらへ。」
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