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食後、伊織は莉王の部屋に向かった
ドアをノックする
返事はない
「兄さん?入るよ?」
カチャ、とドアを開けて入る
いた
ベッドの上で布団を抱いて座っている
「…兄さん?」
「ふみゅ…」
こてん、と莉王は寝転がってしまった
「…くふぅ…」
伊織は首を傾げる
本当に様子が変だ
どうしたのだろうか
「兄さん、今日学校でなんかあった?」
頷き
「どしたの?いじめられたの?」
横に振る
「じゃあ…」
「…なんでもないの…」
え、と伊織は素っ頓狂な声を上げる
「いじめられてはいないの…ただ…」
「ただ?」
気になるワードがあったので復唱してみた
莉王はきゅっ、と布団を強く抱きしめる
「色々…びっくりしたの…」
なんだそりゃ、と伊織はずっこける
要領を得ない答えだ
いったい何がそんなにびっくりしたのか言ってもらわないと困るというのに
しかし、本人も整理したいことがあるのだろう
ここは、そっとしておくのが良いようだ
「わかったよ、兄さん、もう聞かない」
「みゅ」
「ゆっくり頭を整理して、明日は元気になってね」
「…うん」
伊織は踵を返し、部屋から出ていった
莉王はさらに布団を力強く抱きしめた
「…みゅ」
そのまま、莉王は目を閉じた
柚季の秘密を知ってしまった自分
隠すべきなのは、流石にわかる
しかし、それで良いのか、いまいちはっきりしない
あんまり考え込むのは得意ではない
すぐに睡魔に負けてしまった
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