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「あ~!」
朝
京都駅に程近い住宅街に大声がこだまする
おそらく、半径200mくらいに住んでいる人は全員起きた
黒い、肩くらいまでのセミロングヘアが揺れ、背後で、コンロに向かっている母を見る
「母さん!私の杏仁豆腐食べた!?」
振り向いた母は、キョトンとしている
「え~?食べてないよ~」
妙に間延びした声で答える母親の言葉に軽く頭痛を覚える
彼女はクツクツ、とシチューを作っていた
「じゃあなんで冷蔵庫にないの!?」
「だから知らないよ~」
おかしい
確かに一昨日買ったはずだ
自分は食べていない
そう断言出来る
ちなみに、ごみ箱も見たが、空きの容器も無い
「なら最初から買ってないんじゃないの~?それかもしくは、奈緒ちゃんに食べられちゃったとか」
はあ?と半眼になる
「適当なこと言わないの、奈緒は昨日は来てないし、食べられないの」
そう、あの子にはアリバイ(?)がある
犯人ではないことは明らかだ
「でも今そこにいるから~」
バッ、と背後を振り返る
そこには、テーブルについて、杏仁豆腐の容器をまるごと抱えて、美味しそうに食べているライトブラウンのツインテールの親友がいた
これまでにないってくらいにこやかな笑顔で、親友に近付く
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