最初は最初

3/6
前へ
/919ページ
次へ
「な~おさ~ん」 猫撫で声で、目の前に座るツインテールを呼ぶ 「あ、お邪魔してま~す」 「お邪魔してるね、ホント邪魔だね」 奈緒は律儀に頭を下げたが、無性にその頭をひっぱたきたくなった だが、それをなんとか我慢して、奈緒の持つ容器を指差す 「それ、どっから出した?」 「ん?これ?冷蔵庫から出させてもらいました、二段目だったかな?」 まさしく、楽しみにしておいた杏仁豆腐があった場所だ 「鷹爪猛襲脚!」 ガゴオ、とテーブルの上に置かれた奈緒の右腕の二の腕を踏む 素晴らしい跳躍力 10点満点 「ほぎゃー!」 哀れな親友に引導を渡してやってから、テーブルにつく いらだたしげに足をパタパタつく 「そんなに催促しないでよ~、母さんの腕は二本で指は20本だわ~」 「えっ!?」 明らかにおかしいので、指折り数える 10である 「足のも指って言うでしょ~」 あ、そっか、と納得する も少し細かく言っていただけるとありがたかったんだが 「あ、そうそう」 台所で鮭を捌いていた母は、何かを思い出したように手を口にあてて、大急ぎでエプロンを外す 「どったの?」 当然の質問です 「今日から居候の子が家に住むことになってるんだけど~、9時頃に京都駅に迎えに行かなきゃなんないのよ~」 時計を見る ただいまの時刻は8時55分 「そりゃ大変だね」 そこらへんにあったファッション雑誌を手に取り、適当にページをめくっていく ―――あ、これ可愛いな あるページをしげしげと見つめる 「……はあぁぁぁぁ!?居候ぉぉぉぉぉぉ!?」 非常に遅いですね
/919ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1496人が本棚に入れています
本棚に追加