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「ちょちょちょちょ!待待待待待待待待って!」
あんまり気が動転したもんで、色々すっ飛んだが、とりあえず待ってほしいというのはわかってほしい
「な~に?時間ないのよ~」
なんともロースピードな着替え方だ
本当に時間がないと思っているのだろうか
「んなこと言ったって、母さん、もう9時回ったよ?」
すでに直角ではなくなった時計の針を指差してあげる
「え…きゃ~!大変大変!待たせちゃうわ~」
大変なのは頭の中ではないのだろうか
「うも~!なんで時間ばかりが過ぎていくのよ~!」
まだエプロンを脱ぎすてたところで進行が滞っているあなたが原因です
散々時間がないない言っていたが、どうやらないのは自覚のようだ
「ところで、なんで待ってほしいの?」
あ、そうだ、とさっき自分が呼び止めていたことを思い出す
「私の朝ごはんは!?」
「悪いけど自分で作って~」
「え~、や~だ~」
と文句をたれる
「我が儘言わないの~」
娘をたしなめた母は、服を着替え終え、玄関に向かう
「じゃあ、9時30分頃には戻ってくるから」
「はいはい…」
半ばヤケクソで母に手を振る
靴を履き、ドアを空け、車に乗り込むまで2分かかった母に敬礼をしながら、踵を返して、台所まで戻る
テーブルの上の奈緒を蹴落として、椅子に座る
テレビを点けて、人生波瀾万丈的な番組を見ていて一言
「ちょ待てぇぇぇ!居候!?聞いてないよ!」
ものっそい速さで玄関へ行き、外へ出る
母はまだ車を発進させていなかった
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