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ぐいっ、と柚季の手が迫って、莉王の肩を掴む
「いいか!?今見たことは誰にも言うなよ!」
気付いていないのかは知らないが、少し離れているはずなのに、胸の先端が莉王の胸に触れている
しかし、そんなことは今は誰も気にしていない
莉王はただただ怯えながら首を縦に振るしかなかった
柚季は手を離し、個室へと入った
葵も、莉王を拘束していた手を解き、柚季について入る
よほど怖かったのか、うるうると涙目の莉王
「ふ、ふえ…ぇぇぇん」
ぴいぴい、と泣き出してしまった
それを、個室の中で二人は聞いていた
「悪いことをしてしまいましたね」
サラシを手に持って、葵が渋い顔をしている
「…そうだな…でもよ、悪いが、こっちも必死だってこと、わからせなきゃ意味がねえ」
柚季は両手を軽く挙げて、サラシを巻きやすいようにする
「…そうですね…でも、これであなたが『女性』だと知っている人が、一人増えたことになりましたね…」
「…ああ」
くるくる、とサラシが彼女の胸を圧迫する
○
最初は、強がりだった
小学生の野球の試合
その時はまだ女の子っぽかった柚季は、打席に立った際、女子だという理由で相手ピッチャーになめられることが嫌いだった
簡単に言えば、負けず嫌いだった
だから、大声で言ってやった
「俺は男だ!だから手ぇ抜いたら承知しねぇぞ!」
精一杯のアピールだった
しかし、その後の戦績、プレーから、『こいつはホントに男なのでは』、と思われ始めた
もとより、スカートではなく、ズボンを履いていたので、それは信じられていった
そして、卒業する時には、同級生全員を欺いていた
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