二人は先輩

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それは、中学になっても同じだった 制服は男子のだったし、体育だって男子のチームだったり、男子の測定基準で身体力テストをやったりした こうなると、男子であることが、楽しくってしょうがなくなった テニスで良い結果を出して、顔も中立的だったので、女子にも好かれた もう本当に男になろうと思っていた しかし、変化は突然訪れた 初潮、そして、第二次性徴として、胸が膨らんできたのだ 体つきはなんとかごまかせたが、胸だけはどうしようもない そのため、サラシで胸を隠すしかなくなった 身体測定のある日は学校を休み、プールだって、アレルギーだとかなんとか、テキトーに理由をつけて見学した なおも大きくなっていく胸は、中学三年生の時には、Fカップにまでなっていた サラシがしょっちゅうズレるようになり、もはや学校でサラシを巻き直さなければならなくなった そんな時に手伝ってくれたのが、事情を知る幼なじみの葵だった 二人はよく一緒にトイレへ行くため、今日のように冷やかされることもあった それでも、女であることは誰にも知られたくなかった それが知られた瞬間、自分の居場所が、無くなってしまうかもしれないのが、怖かったからだ だから、後輩を泣かせてでも、秘密にしてもらう必要があった こうでもしなければ、いけないのだ ○ 個室から出た時には、まだ莉王はぐずっていた 「…日村」 呼び掛けたが、莉王は怯えた目で柚季を見上げる 柚季はしゃがみ、彼の頭を撫でた 「…悪かったな、いきなりびっくりさせて」 「…みゅ」 莉王は大人しく撫でられ続けている
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