パンジーの恋

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 初めて会ったのは、中学生の時。高校の敷地内にある花壇を世話している彼女に一目惚れ、春の日差しのような穏やかな笑顔に釘付けになった。 彼女は、桜のように美しい人だと思った。 だけど、それから何度も見掛ける度に彼女への想いを募らせ、彼女に近付きたいと願って、やっと同じ学校に入ったのに、彼女は病気で休みがちなことを知った。 同じ部に入り、親しくなればなるほど、彼女に惹かれていく気持ちは止められない。 彼女は、花はどれも好きと言った。特に、パンジーが好きだと笑った。 綺麗で親しみやすい花は彼女のようだと思った。 彼女は、本当は、誰よりも寂しがり屋だった。本当は、パンジーの様に望んでいたのかもしれない。  やっと彼女が学校に来れるようになっても、彼女は来年の春には、ここを去る。解っていたのに、想いを伝えることも出来ずに、彼女の命が尽きかけていく様を見守ることしかできない。
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