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とある少女の命が今、尽きかけていた。
誰に愛されることもなく、死を悟ったのに、誰よりも優しく笑い。彼女は泣きもしなければ、醜い言葉も、人を罵ることすらせずにただ、いつだって笑っていた。
体が弱いながら、一生懸命、花の手入れをしていた。ある日、彼女に尋ねたのだ。
「お前はどうしてそこまでするんだ?」
「瀬川先生。自然界の花は雨、風に曝されても決して簡単には枯れたりしない。そんな強い要素を持っているんです。この花だって、人の手によって、育てられているかもしれないけど、誰の為でもなく一生懸命生きているんです。綺麗な花は人の心も優しくしてくれるって、祖母が言っていたんです。だから、私も花の様に誰かの為じゃなく、一生懸命日々、生きていけたらって思うんです。・・・愛情を掛けた分だけ、応えてくれるような気がして、だから世話しちゃうんですかね?」
と彼女は笑いながら言った。純粋で穢れないという言葉は少女の為にあるような気がした。
「・・・私がいなくなっても、困らないかもしれない。だけど、確かにほんのひと時、ここにいたいう証を残したくて、育てるんじゃいけませんか?」
彼女は強い人だと思っていた。だけど、本当はそんなことはない。強靭な心を持っているわけでもなく、だからと言って折れてしまうような軟な少女ではない。
彼女の死を望む人は多いようだが、俺は一生徒として以上に、消えかける儚い命に抗いながら必死に生きている彼女が誰よりも生きて欲しいと思った。
だから、もしも願いが叶うなら人並みに幸せな少女であれと願わずにいられない。
あの少年なら、出来るかもしれないと勝手に期待していた。
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