114人が本棚に入れています
本棚に追加
/30ページ
浅川の仕事は抜かり無い。
その後、手続きはあっという間に済ませてくれた。
その仕事ぶりにちょっとだけ見直したりなんかもして。
あ、本当、ちょっとだけね。
決まった面接の日程は三日後の午前十時。
「落ちてくれて構わないですよ?」
浅川は最後までそんな事を言っていたが、全然気にならなかった。
先の見えない就職活動に、少しの明かりが見えたあたしは晴れ晴れとした気分だったから。
それが浅川のお陰ってのが癪に障るけど。
そんな事には構ってられない。
人生掛かってんだから。
「おあいにく様。あたし面接では落ちた事無いもんで。ありがとね、浅川サン」
そしてあたしは安定所を出た。
この日久々に部屋の掃除をした。
たった二カ月放置されていた部屋は誇りっぽく、良くこんな所で生活できたなぁ、なんて思ってしまった。
まだ職が決まった訳ではないのに、少しだけ前向きにポジティブになっただけでこんなに気分が変わるなんて。
自分の思考が単純過ぎて笑えてきた。
夕方、粗方の掃除を終えたあたしはひよりに電話を掛ける事にした。
まだ内定した訳でも無いのに。
手に取った携帯のストラップを見て胸がキュンとした気がした。
最初のコメントを投稿しよう!