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「本当に良くやってくれたと評価してるんだけどね…何せこのご時世でしょ?
ほら…家庭のある男性社員を家族と路頭に迷わせる訳にはいかんのよ…。解ってくれな…」
…解れって…何を?
あたしは路頭に迷ってもいぃってんですか?
大学を卒業以来、尽くしてきましたよ、この五年。
いよいよこれからって時じゃん!
あたしまだまだやれる女だよ!?
たぶんこの時のあたしはこめかみに青筋でも立っていたかもしれない。
それでも愛想振りまいて、精一杯の強がりを言ったのは最後のプライド。
この五年、辛くても苦しくても必死でしがみついてきた。
男社会に押しつぶされるのだけは悔しくて。
努力なんて自分が持てる以上にしたつもりだし、使える手なら何でも使ってやった。
その結果、他の奴らにどんな目で見られていたかなんて解っている。
自分を犠牲にしながらのし上がってきたのに…!!
終わりはこんなに一瞬で、雑草の様に摘み取られたあたしは悔しさに押しつぶされそうだった。
「そうですか。あたしの事評価して下さった様ですけど、そんな低レベルな評価しかなさって貰えないなんて、あたしも見る目が無かったみたいですね。残念です、お世話になりました」
そう言って社員証をデスクに残したあたしを、部長はしかめっ面で見送ってくれた。
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