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その夜あたしは義妹を連れて実家近くの居酒屋にいた。
「女だから何だって言うのよー!!」
そう叫びに似た声を上げながら生中を空にした。
グビグビと喉は音を鳴らしてアルコールを飲み込んでいく。
割といける体はそれをすんなり受け付ける。
因みに本日四杯目。
「美和ちゃん…ちょっと飲み過ぎなんじゃない?」
「何ぃ?ひよりまであたしにそんな事言う?」
酔っ払うと質の悪い…らしいあたしは普段でも気が強い方だが、だれかれ構わず喧嘩を売るのが悪い癖。
「すいませーん!生中もう一杯!!!」
そんなあたしを心配そうに見つめるひより。
彼女は出来の悪い弟の嫁さん。
協調性が無いのか打たれ弱いのか、辛抱が足りない弟は高校を卒業してからいくつもの会社を転々としているが、未だに天職には巡り会えないらしく、この嫁さんに迷惑かけ放題。
あたしはそんな弟が恥ずかしくてしょうがない。
絶対にあたしの方がしっかり生きていけているのに、それでも両親は、早くして結婚した弟の肩を持ち、あたしに嫁入りの催促をしたりする。
それが腹立たしくてならない。
しかし今、そんな生活を送るあたしが間違えていないと言えたはずの証明は無くしてしまった。
仕事もなく、結婚もしない、こんな娘に両親はどんな顔をするだろう?
考えたくないあたしは、運ばれてきた生中をまた一気に飲み干した。
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