114人が本棚に入れています
本棚に追加
「だいたいさ、ほら、あれ見てごらんなさい!!あんなひょろっこい男よかあたしの方が全然使えるっつーの!!体力だって負けちゃいないんだよー!!!」
そう言ってカウンターに座るスーツを着こなした細身の男性を指差したあたしをひよりは制した。
「こら!美和ちゃん!ちょっと飲み過ぎよ?」
あたしの指はひよりの小さな手のひらに包まれる様にして下ろされた。
「…すいません、何か飲みすぎたみたいで…」
ひよりがカウンターに向けてそう頭を下げているのは何となく分かった。
「いえ、いいんです気にしないで下さい」
その男はそう言ってあたしを許した。
しかし虫の居所が悪いあたしは、その余裕さにすら苛つきを覚えた。
「リストラが何さ!独り身で仕事しかなくて何が悪ーーいっ!!」
あたしは周りなんて全く気にもならない程に酔いつぶれてグダグダ。
普段ならここまで酔う事などないのに。
ジョッキ片手にテーブルに突っ伏しているあたしにひよりは言った。
「とりあえず美和ちゃん、お父さんにもお母さんにも…勿論和ちゃんにも黙っておくから…仕事なんかすぐ見つかるよ、美和ちゃん出来る子なんだからさ」
そう言って微笑んだひよりにあたしは安心した。
本当に何とかなる気がしたのは、お酒のせいもあったのかもしれない。
最初のコメントを投稿しよう!