第一回戦。

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「小渕美和さーん、小渕さーん」 ただ漠然と時間の流れる様を悶々と待ち続けたあたしの名前が呼ばれたのはここに来てから二時間後。 急に自分の名前が呼ばれたもんだから慌ててしまう。 「あっ…はいっ…はい!!」 小脇に抱えた書類に更に力が入る。 そしてあたしの名前を呼んだ職員のいる席まで向かった。 用意された椅子の前まで来ると、その職員は椅子に掛けた手を止めて一瞬呟いた。 「…あっ」 「…へっ?」 あたしの口からはそれに対する疑問符が飛び出した。 しかしそれは気のせいだったのか、その人は何事も無かったかの様に自分の椅子に腰を下ろした。 あたしもそれを確認すると腰を下ろす。 「宜しく…お願いします…」 「あー…はいはい。小渕美和さん、二十七歳。市内在住で彼氏なし…っと」 パソコン画面に向かい、あたしの個人情報を入力しているその人は、明らかにおかしな事まで言っていた。 「五年も勤めた会社に解雇され、やけ酒ついでに他人に喧嘩を売る…と」 あたしは黙って下を向いていたがそこまで聞くとついに口を出した。 愛想笑いもできていたかは定かではない。
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