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成功、誰もがそう思った。
だが爆煙の中から現れたそれを見て、皆一様に絶句する。
確かに、小型輸送艦はヴィレッタの射撃によって爆発した。
搭載されていたTRBも巻き込まれ、塵と化したはず。
だがナノマシンの繭に覆われていたのならば、爆発に巻き込まれる訳がない。
キョウスケは独り、嘆いた。
「ウートガルトが……敵になった……?」
薄れていく虹色の繭から、白い巨人が現れる。
その背中側から虹色のオーロラのようなものを放出しながら、背後に五体のロボットを従え。
ウートガルト・ノヴァの緑色のバイザーが、怪しく光った。
時を同じくして、ミヅキ・アオバ率いるヤマトが駐留しているウエスト・コロニーにも、敵が迫ってきていた。
激震と警報が鳴り響く艦橋で、マキノ曹長の報告が虚しく響く。
「現在、本艦上空で幽霊が駐留軍と交戦中! 全員、第二級戦闘配置へ!」
「艦長どうします!? このままではセントラルに被害が……!」
副官のタツミヤ・オオノ中尉が、焦りながらミヅキに指示を仰ぐ。
すると、彼女は意外にもこう言ってのけた。
「はい。ですから、発進しましょう!」
「……へ?」
艦橋の空気が、固まる。
「いえですから発進準備も終えていますし、コロニー内の第二小隊を呼び戻して迎撃するんです!」
その時の艦橋の空気を例えるとすれば、鳩が原子爆弾を食らった顔……という多少オーバーな表現がいいだろう。
ただ独り、ミヅキだけはやけに陽気な声で指示を下すのだが。
「遊撃機動戦艦ヤマト、発進!」
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