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少年は新聞を読んでいた。
とはいっても旧世代のような紙ではなく、携帯端末に表示されているものだ。
暦が西から新に変わって早一世紀、人類の進歩は僅かだが停滞する兆しを見せている。
それでも新聞というのは面白いもので、毎日新しい情報をかき集めていた。
今日の新聞の一面には、でかでかと『民間企業アルバトロス開発の新造戦艦、今日進宙式』や『今だ行方不明の英雄、一体何処へ』といった記事が掲載されている。
前者は全くもって興味が無かったが、後者は少年に取って興味があった。
何故なら、その英雄とは自分自身のことなのだから。
懐かしむように、少年は苦笑いを浮かべる。
二年前に起こったとある戦争で、少年は多大な戦果を上げた。
そして同時にその戦争の裏側をも知り、精神に大きな傷を負ってしまったのだった。
今はとある協力者の御蔭でかなり回復し、過去の整理も終えている。
今の自分はもう軍人ではなく、ただの少年だ。
そう、ただのーーーーーー。
コンコンと部屋のドアがノックされ、その向こうから柔らかい少女の声が響いた。
「アキラ? 朝ご飯出来たよ、食べよ?」
「ああ、今いくよ。リック」
携帯端末を閉じ、少年ーーーーーーアキラ・シラサギは立ち上がった。
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