102人が本棚に入れています
本棚に追加
『そう気張りなさんな、艦長。楽にしてろって』
急に目の前に開いたウィンドウにミヅキは声を上げて驚き、ブリッジクルーが皆そちらを向いた。
何となく、その目には不安の色が混じっている。
「あ、あの、大尉。そう言ってくれるのは嬉しいんですけど、い、いきなり通信を開くのは止めてもらえませんか?」
クルー達を作業に戻らせながら、ミヅキはウィンドウに映った大尉ーーーーーーキョウスケ・ウラキへと視線を戻した。
彼もまた戦後すぐにスカウトされ、このヤマトでの機動部隊長を勤めている。
二人は二年前の戦争で知り合い、しばらくの間キョウスケともう一人の少年は彼女の艦で戦っていた。
ここで会ったのも何かの縁とミヅキは考えていたのだが、どうやら彼はとある目的の為に参加したらしいのだ。
だがそれでも彼の人望は何故か高く、今も出撃前の僅かな時間を利用してクルーの緊張をほぐそうとしている。
『ああ、分かったよ。取り敢えず出港までまだ二時間あるから、俺は第一小隊を率いて周囲の偵察。マディンの第二小隊はウエストコロニー内の哨戒だ。いいな』
「イエッサー!」
敬礼するミヅキを除くクルー達が返礼し、通信が切れる。
続けて管制官のビルウッド曹長が発進しようとする部隊の誘導を始めた。
「進路クリア、アパレシオン隊、発進どうぞ!」
『了解。アパレシオン1番機、出る!』
艦橋窓の向こうに、青白い光を撒き散らす鋼の巨人が散らばった。
最初のコメントを投稿しよう!