2人が本棚に入れています
本棚に追加
霜氷る夜
尖った草を踏みながら
母に手を引かれ往く私
凍てつく夜空に
ピカピカ光る
朽(クチ)た木の枝葉
夜の帷(トバリ)を
抱くよな
その枝先に
ふわり、ふわりと
舞降りる
小さな落下傘
落下傘、
夜空の色を
帆に透かし
積み荷の中の
常世の孚(マコト)
私の胸に降ろして
消えた
落下傘、ひとつ
耳の奧に海馬が
棲んでいることを
落下傘、ふたつ
火龍は岩漿(マグマ)に
恋していることを
落下傘、みっつ
人魚(セイレーン)が
哭いて
嵐がくることを
小鬼の影が
垣根に伸びて
あんたはだぁれ?
と母が訊く
還っておいで
還っておいで
此岸が嫌なら
妾(アタシ)の
胎内(ナカ)へ
.
最初のコメントを投稿しよう!