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………。
……。
…。
もう何匹殺したのか…
奴らは闘争本能があるかぎり向かってくる。
私がもう限界だと思ったとき、耳に届くかすかな羽音。
意識が朦朧としているので、空耳かと思い、あまり気にしていなかったが、だんだんとその音は大きくなっていく。
…これは空耳ではない。
そして、もう誤魔化しようのないほどの羽音は私の後方で止んだ。
振り向きたくはなかった。
周囲のランポスたちも動きを止めている…
私の直感が振り向くことを拒絶し、危険を知らせる。
だが、私は振り向かなければならない。
そして、私はゆっくりと首を後ろに向けた。
…声が出ない…
もう嫌になる光景だった。
その姿は大きく、緑を背景に映える赤色の皮膚…
壮大にして気高い王者
『リオレウス』
…今の私に選択肢など残されてはいなかった。
そして、瞬間にこの依頼の裏が読めた…
ランポスたちの餌不足…
すべてこの王者のせいである…
村人たちも知らなかったのだろう。
私は走った。
力の限り走った。
森を抜け、草原を走り、大きな滝のある場所まできた。
辺りを見回すとリオレウスの姿はなく、私は安堵感に包まれる。
それと同時に無性に悔しかった…
目に浮かぶ涙をぐっと堪え、この前のランポスとの戦いを思い出していた…
少女の顔が忘れられない。
私は少女に嘘をついた。
彼女が真実を知るのは時間の問題だろう。
…私は自分の小ささに苛立ちを覚えた。
所詮、奴らにとってはとても小さい存在だろう…
少し牙を立てれば脆く崩れ、雄叫びを上げれば、立ちすくむ…
人間とはそれほど弱い存在だろうか?
そう考えたとき、私は自然と…自分の剣を研ぎ、ポーチにあるアイテムを確認していた。
母が作ったお守りを握り締め、額にあてる…
私は奴のいた場所に足を向けた。
リオレウスと遭遇した場所に戻ると奴は優雅に食事中だった。
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