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私は奴にわざと気付かれるよう、大声を上げ、丘に向かい走った。
案の定、奴は私を見つけるとすぐさま走って追いかけてきた。
もう飛ぶ体力が残っていないのだろう…
追いつかれたら私の負け、逃げ切れば私の勝ち。
多分…
私は無我夢中で走った。
もう奴は私のすぐ後ろで牙をむき出し、もう私を殺すことしか考えていないような前傾姿勢で走ってくる。
丘の向こうまでもうすぐ、20m…10m…5m…
私は丘の向こうに力いっぱい飛び込んだ。
設置した爆弾に石ころを投げる。
石ころが当たり起爆する爆弾。
大きな轟音と共に炎と衝撃がリオレウスを飲み込み、私の目の前に大きな火柱が立つ。
私は目を凝らし、火柱の中を見つめる。
あのリオレウスがどうなったのかを確認しなければならない。
火柱の中に黒い塊があった。
しかし、その黒い塊は私の方に近づいている。
そう…奴は死んではいなかった。
炎に身を焼かれ、翼は風を受けることを許さないほどに爛れ落ち、これがリオレウスであったのか分からないほどに皮膚が変色している。
不思議な事に私はもう死を恐れなくなっていた。
私と戦い、爆弾まで耐え抜き、その身が焼かれようとも、標的に向かおうとする、その壮大で偉大な王者に尊敬の念さえ生まれてきた。
彼こそが本当の“狩人”なのだと。
彼にその身を砕かれるならば、私は光栄であるとさえ思えた。
私は自ら彼に近づいていった。
「もうお前の勝ちだ」
私はそう言って、彼の前に座り込むと声が聞こえたのか、王者はゆっくりと私に近づいてきた…
そう、ゆっくりと…。
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