~第1章~

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「おい…、こ…、だい…」 耳の奥に低くにごりのある雑音が聞こえる… 私は夢を見ているのかと思った。 死んだ世界で聞き覚えのある声が呼んでいる。 私は目の前が真っ暗になっていることに気が付いた…何のことはない。 ただ、目を瞑っていただけだ。 ゆっくりと目を開けると目の前に男の顔がある。 「おい、小僧、大丈夫か?」 ダグだった。 どうやら私は生きているようだ。 状況は何も飲み込めていないが、出血のせいで手足の機能が戻っていないのは確かだ。 どれくらい時間が経ったのかは想像がつく。 日が向こうに見える山に落ちてゆくのが見えている。 意識はまだしっかりしていないが、ダグが私に状況を説明してくれた。 「小僧の方から凄い音とランポスの鳴き声が聞こえたんでな。 久々に走ったぜぇ~」 …走ったぜぇ~じゃねぇよ。 こっちは必死だ。 「今回は運が悪かった。 群れの中にドスランポスがいたからな。 俺が着いた時には小僧は群れの中で気絶していた。 多分、気絶した直後だったんだろう。 俺様の気配に気付いたランポス共は飛び掛かってきやがったが…ふぅ、もう言わなくても分かるだろう?」 あぁ、分かるよ。 あんたの後ろにあるランポスの死体の山ね。 死体のほとんどは原型がないというか、どこかしら体の部位がない。 ドスランポスなど首だけが残っている始末…そうこうしているうちに村人がどこからともなく集まってきた。 どうやら緊急事態に備え、避難壕を作っていたようで、ランポスたちが去るまでずっと隠れていたらしい。 運悪く逃げ遅れた村人は丁重に埋葬し、冥福を祈った。 なんにせよ“ダグ”のおかげで仕事は成功したようだ。 その証拠に村人たちは涙を流し、我々に感謝している。 だが、私は恥かしかった。 結局、気を失っていただけだったのだから。 悔しくて、握れない拳に力が入る。 また、それが私の心に波紋を広げた… 「そう気を落とすな。あの状況で生き残っただけでも大したもんだ。」
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