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小刻みに震える少女。
それを何も言わず見詰める男。
二人の間に、何とも気不味い沈黙が流れる。
すると土方はくしゃくしゃっと少女の頭を撫でた。
彼女が顔を上げると、目の前には怒ったような、泣いているような……優しい笑みを浮かべた土方がいた。
一瞬で、消え失せてしまったが。
「……怖がんな。別に取って喰うつもりなんかねぇよ。只、お前が何者かはっきりしねぇと、」
「さっすが、土方副長!」
沖田は大きく手を打ち、土方に倣って少女の前にしゃがみこんだ。
そして彼が二の句を告げる間も与えず、捲し立てる。
「私は沖田総司といいます。この人は土方歳三さん。ちょっと強面ですけど、気にしちゃ負けです。あ、でも女たらしなので、そこは気を付けてください。
それから甘味が食べたくなったら、私の所へいらっしゃい。奢ってさしあげますから……土方さんのお金でね」
呆気に取られる少女を他所に、こう締めくくった。
「じゃあ、次は貴方の番ですよ。名前、何て言うんですか?」
沖田は子供のように瞳を輝かせ、じっと少女の返事を待っている。
「私は……」
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