第一章

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鴨川の岸辺で一人、少女が晴れ渡る青空を仰いでいた。 碧みがかった髪は黒い髪紐で結われ、先が肩の辺りで風になびいている。 顔にかかった束を耳にかけたその指は、棒切れのように細い。 だが細いのは指だけなのではなく、身体つきが華奢であった。 身を包む着物はひどく汚れ、所々破れている。 それでも元は上等だったのか、時折、金の刺繍が太陽の光に煌めいていた。 そして彼女の右側には、一振の刀が置かれていた。 一羽の雀が彼女の視界を横切った。 しかし顔の割に大きな、そして少し吊り上がった漆黒の瞳には映っていない。 彼女は何処を見るでもなく、ただ空を眺めていた。 視線を水平に下げると、対岸では老人が釣糸を垂らしているのが目に入る。 魚が草むらに放り出されたのを見届けると、少女は胸元へ手を差し入れた。 何か取り出した彼女は、それを両手で力強く握り締め、俯いた。 その時、彼女の背後から一人の男が姿を現した。 顔は頭巾で隠されていて、見えない。 徐々に男が忍び寄る。 少女は全く気付く素振りを見せない。 男は刀を拾い上げると、彼女の頭めがけて勢いよく振り下ろした。
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