第一章

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二人の男が川沿いを歩いている。 彼らは腰に大小の刀を差していた。 一人は背が高く、逞しい体つき。 闇色の長い髪は頭上で束ねられている。 眉間には深い皴が刻まれ、そこから普段の苦労が伺える。 細く吊り上がった目は鋭い光を放ち、己が前方を行くもう一人の男を睨み付けていた。 「総司!早くそれを返しやがれ!」 彼、新撰組副長、土方歳三が怒気を含んだ声で叫ぶと、小柄な男が振り返った。 「嫌ですよ。まだお団子食べ足りませんから」 そう言ってにっこりと微笑んだ美青年は、一番隊組長、沖田総司。 丸顔に丸い目、そして細い身体。 土方と同じ位置に束ねられた黒髪にもし簪があれば、女と見紛うだろう。 だが腰で殺伐とした気配を釀す刀の為に、世の男が声をかけることはなかった。 「次は彼処でお汁粉を……あれ?」 突然立ち止まった沖田。 追い付いた土方が、その手から隙有りとばかりに金入れを奪い取る。 「ったく幾ら人の金で食えば満足すんだよ……おい、どうした」 踵を返した土方は、動かない沖田を不審に思い、眉根を寄せる。 視線の先には、小さい岩の上で羽を休める一羽の鴉。 「只の鴉じゃねぇか。帰るぞ」 「違いますよ」
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