第一章

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土方に掴まれた腕を振り払い、一目散に駆け出す。 「大丈夫ですか?!」 彼の後からゆっくり歩み寄ると、それは岩ではなく、人間の頭だった。 しかも、まだ若い女の頭。 辛うじて岸に引っかかっている彼女の顔は血の気がなく、ぐったりとしている。 「死んでんじゃねぇか?」 「いえ、微かに脈があります!」 透き通るように白い手首を持ち上げ、沖田は声を上げた。 「取り敢えず屯所に連れて帰りましょう!」 突拍子もない提案に去りかけていた土方が目を遣ると、彼は既に女を抱き上げていた。 そんな細い身体の何処に力を隠しているのかと問う余裕もなく、慌てて答える。 「んな得体も知れねぇ人間をどうして……っておい!」 彼の言葉は間に合わず、沖田は自分の羽織をかけ、走り出していた。 「待ちやがれ総司!」 「嫌ですよ!」 全く立ち止まろうとしない背を見つめ、溜め息を吐く。 「今日は録な事がねぇ……」 土方は髪を掻き毟ると、くたびれた様子で沖田を追い掛けた。
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