第一章

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一人の少女が、温かい布団の中で目覚めた。 幾度か瞬きを繰り返し、ゆっくりと起き上がろうとする。 「……痛ッ……」 だがそれは、突然走った後頭部の痛みに遮られた。 恐る恐る手をやると、きつく布が巻かれてある。 見知らぬ場所に少女は不安を覚え、きょろきょろと辺りを見回した。 何か自分の知っているものはないか、と。 「起きたんですね!大丈夫ですか?」 不意に底抜けの明るい声がして、そちらを向けば、可愛らしい青年が襖に手をかけて立っていた。 青年の後ろにはもう一人、腕を組んでいる男。 その男は威圧的な雰囲気を纏っている。 だが少女は何故か、捜し物を見つけたような気でいた。 安心感と言えば、決してそうではないのだが。 「えっと……あ、はい。大丈夫やと思います……あの、此処は?」 「新撰組の屯所だ。何者だ、お前」 探るような目で睨まれ、びくりと身体を跳ねさせる。 すると青年が男を咎めた。
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