546人が本棚に入れています
本棚に追加
一人の少女が、温かい布団の中で目覚めた。
幾度か瞬きを繰り返し、ゆっくりと起き上がろうとする。
「……痛ッ……」
だがそれは、突然走った後頭部の痛みに遮られた。
恐る恐る手をやると、きつく布が巻かれてある。
見知らぬ場所に少女は不安を覚え、きょろきょろと辺りを見回した。
何か自分の知っているものはないか、と。
「起きたんですね!大丈夫ですか?」
不意に底抜けの明るい声がして、そちらを向けば、可愛らしい青年が襖に手をかけて立っていた。
青年の後ろにはもう一人、腕を組んでいる男。
その男は威圧的な雰囲気を纏っている。
だが少女は何故か、捜し物を見つけたような気でいた。
安心感と言えば、決してそうではないのだが。
「えっと……あ、はい。大丈夫やと思います……あの、此処は?」
「新撰組の屯所だ。何者だ、お前」
探るような目で睨まれ、びくりと身体を跳ねさせる。
すると青年が男を咎めた。
最初のコメントを投稿しよう!