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「ちょっと土方さん……いきなりそんな事聞くから、怖がってますよ」
――『土方』
そう呼ばれた男を、少女は思わず凝視する。
「……っ」
合ってしまった目を、素早く逸らせた。
……聞き覚えがあると思ったのは気のせい……?
今の彼女は、狼に追われ、死の恐怖に怯える兎そのもの。
青年はかたかたと震える少女を伺い見ると、徐に土方の腕をつねった。
「ってェ……何しやがる、総司!」
「貴方が悪いんですよ。土方さんの目が、鷹のようだから」
青年、もとい沖田は、終に俯いて布団を握り締める少女を顎でしゃくった。
「ほら、土方さん」
「餓鬼と面倒事は御免なんだよ」
「そんなこと言わずに」
ね、と首をかしげる沖田。
目が笑っていない。
土方は一つ、盛大に溜め息を吐くと、少女の前にしゃがみこんだ。
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