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前田君は26歳
営業部のホープである。顔立ちは可愛くて下手すれば学生に見える
ランチは彼らしくのんびりできるカフェだった
『藤川さんはスポーツみますか?』
『観ますよ。前田君は?』
『俺はサッカーと野球です。そのためにスカパーまでつけて一日見てる事ありますよ。どんなの観ます?』
『あ…相撲かな』
一瞬沈黙があったけど前田君は笑いながら言った
『藤川さんは俺らの間では不思議さんって呼ばれてるんですよ。行動とか地味なのに、あれはわざとで虎視眈々と課長の座狙ってるとか、すっごい大物の愛人でこの会社の社長も一目置いてるとか…』
『ショムニの観すぎ(笑)私はただの32歳独身のOL…鈍臭くはないけど地味に努力はしてるわ
だから営業部にも用事あればメールでって言ったの。メール伝達できてなかったの、うちだけだもの…』
『確かに…でもミスしそうで多分藤川さんにメール集中してるかと』
やっぱり…上手くいかないもんだ。私は憂鬱になった
『そんな顔しないでくださいよ。美人が台なし』
『間違い。整形美人よ(笑)』
『二重にしたくらいで(笑)大袈裟。美人は美人だよ』
『ありがとう』
『でもよくわからないんだよなぁ。藤川さんはやっぱり不思議さんだ』
『考えすぎだって(笑)私が飲みにいったりしないのも、彼氏とか会社に友達いないから
仕事できるのは皆に押し付けられるから
土曜日はスーパーで買い溜めして一週間分の料理の作り置き
日曜日は…まあ適当
こんなのどこが不思議よ~ドラマ観すぎだわ』
『なんかいいな』と前田君は笑った
『お金くれたらお弁当作ってきてあげるわよ。月に一万円で(笑)』
『え?』
『マジで作ってあげるわよ。まあ内容によるけどね~儲けさせてくれんなら二万円くれたら』
『はあ…』
『ただでお弁当なんて思ってたでしょう?年上なめるなよ(笑)頂くものは頂くよ』
『でも作ってくれる気持ちあるんですよね?』
『あるよ~ないよ~どうしよ~(笑)』
私は意地悪のつもりで地味な事言っただけ…
なのに
『払います!作ってください』
…らしい
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